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日記と雑文を掲載しています。実在していた人物について創作していることもございますのでご注意ください。

みるくせゑきについて

 

ミルクセーキって、素敵だ。

それはさながら、魔法のステッキのように。

みるくせゑき、とでも表記してみたくなるノスタルジィを溶かして、それはただただ甘くて、素敵なのだ。

 

冬の新宿を行く。

凍える寒さ、ならばまたドラマチックかもしれないが、現実的すぎるほどに現実的な本日の最低気温は8度ほど。

とはいえやはり指先はかじかんでいて、ポケットのなかのアイポッドはすこしつめたい。

ミルクティでも飲もうかな、無意識に行き過ぎた視界の自販機を検索して、来た道を戻る。おお、あったあった。ホットの段をなぞり見て、さて、ミルクティーはあるかしらん。

ふと、異物を認める。ミルクセーキ、なつかしの味。確かに、ちょっと懐かしいかも。かといって、思い出というほど常飲していたかと言うと微妙だけれど。

甘すぎるかな、という懸念と暫し戦争。ま、いいか、飲めないってことはないだろう。

銀貨と引き換えに手に入れた重みを抱えて、道の脇に寄り、なんとなくイヤホンを外して、缶のプルタブを引く。あ、爪折れそう。切らなくちゃ。

壁に寄りかかってひとくち。うーん、甘い!なんだか、意味もなくあっぱれ、なんて言って天を仰ぎ見たくなるような甘さである。こころのなかで苦笑しながら、そうは言ってももうひとくち。やっぱりとっても甘くって、こんどは少し息を零して苦笑する。

べつに、おいしいって訳じゃあないのだ。ただただ甘くて、そしてそれは、人生を肯定してくれる。理由もなくそんな気がしている。

秋空に取り残されたセンチメンタルが、控えめな日差しになって空気に沈む。気付けば空になっていた缶を伸びすぎた爪に引っ掛けて、冷えきったアスファルトを蹴った。

(690字)