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日記と雑文を掲載しています。実在していた人物について創作していることもございますのでご注意ください。

タイトル未定②

祭りのほとぼりも冷め、平穏すぎるほどに平穏な夕暮れの街。長く伸びる黒影と共に、自宅への道を歩む。父の治めるこの街は、土地こそあるものの、言ってしまえば土地しかない。大人の仕事と言えば農業しかなく、学校も小中高それぞれひとつだけ。中学校からずっと着ている代り映えしない制服は、全身灰色でちょっぴり、いやかなりダサい。こんな制服を着こなせる人なんて、いるのだろうか。
———いた。それも、何故か自宅、正確には事務所に。つややかで色白な肌は頬だけがじんわりと紅く、ゆるくウェーブのかかった茶髪の下の大きな瞳の輝きは、生命への希望故か。灰色のスカートの下から伸びる足はすらりと長いが、身長としては私より頭一つ分ほど低い。以前と違い黒髪ではなかったが、まごうことなく祭りの舞人の少女であった。
震える声で事情を聞けば、神主さんが亡くなったために孫である彼女が東京から来たのだとか。そこを父に見込まれ、次の市長選挙の広報手伝いをすることになったのだそうだ。使えるものはなんでも使う、父親らしい戦略だ。とはいえそんな冷静な思考は後付けのもので、突然の展開に困惑する私が言えたのは、「お友達になってください…」という一言だけだった。

(506字)