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「共産党宣言」を読んで


時は19世紀中頃。続く戦争、広がる貧富の差、そしてクリミア戦争敗北による、政治経済システムの否定。ロシアは混迷と泥濘の中にあった。働けば働くほど貧しくなる日々と激しさを増す勤めに疲れきった労働者たち。しかして、彼らに一筋の光を差す如く、一冊の名著が世にもたらされる。「共産党宣言」、21世紀に入った今もなお愛読される、世界記憶遺産である。

作者のマルクスは執筆時弱冠29歳。軌を一にするエンゲルスと共に半年近くを費やしてこの著を完成させた。221日に発表されるやいなやさまざまな国で翻訳され、冬将軍を吹き飛ばす勢いで宣言は広まっていくこととなった。

苛烈を極める内容も然る事乍ら、私はこの著によって文章の持つ力を再確認させられた。文学的な観点からも、共産党宣言は高い評価に値すると強く思う。学もない労働者の心にあれだけ強く訴えるものを書く才覚よ!第四章の締め括りなどは特に素晴らしい。以下に引用する。「プロレタリアはこの革命によって鉄鎖のほかに失うなにものもない。彼らの得るものは全世界である。万国のプロレタリア団結せよ!」なんと力強い文章だろう。立ち上がり、拳を天高く突き上げたくなるなにかがある。強く心を掴んで揺さぶり、魂に問いかけてくる熱意があるのだ。葉山嘉樹先生を敬愛する私は、初読の際、先生がこの文章に触れたときの感動が身体を駆け巡り、ページをめくる指先が痺れるようだった。

マルクスの真価はいったいどこにあるのか、思考を重ねたとて見える気がしない。それほどまでに彼は優れた知性を有しており、彼に行動を起こす若さと怜悧な頭脳が共存していたことに時代は感謝すべきである。いや、彼を産んだ時代に我々が感謝をすべき、といった方が正しいか。

とはいえ、我々は圧倒され萎縮するために歴史を学ぶのではない。共産主義は決して我々の敵ではなく破滅の手段でもないということを確信すべきである。ものごとを知るには常にその否定を知る必要があり、フロイトによれば否定に出会うことは出発点だという。私達の安寧を支える資本主義、その対立概念である社会主義から学べることがあるに違いない。

いまや思想の垣根を越えて団結し、時代を前へと進めるとき。だからこそ、共産党宣言が多くの人の背中を押し、思考をより高い次元へと導くと思うのだ。改悪とは知りつつも、私もマルクスになぞらえて、この一文で作文を締めくくろう。

万国の地球人よ、団結せよ!